COMMENT

戦争場面が一切ないけど、やっぱり反戦映画だと思いました。
原題の「Last Flag Flying」の意味を考えても、そう思いました。
"Keep Flag Flying "戦い続けるのを、もう最後にしようぜというような。
そして、ベトナム帰還兵とイラク帰還兵はやはり似ていますね。

2世代にわたって国に命を捧げた親子、ドクとラリー。
この2つの戦争は、救いようのないほど大義も意味もなく、
長引かせるだけ長引かせ、若い世代は粗末に扱われた。
これだけ国に尽くしたのに、払わされる代償が大きすぎやしませんか?

「心から恨んでいるものは、大昔の自分の愚かさ」だと断言していたサルが、
「辛かった」と本音をぶちまける場面。
帰還後は自由に楽しく生きているように見えた彼の心の傷があまりに深いことに、
こちらまで胸が痛くなりました。
イラクで強張った顔をした若い米兵たちを思い出しました。
私たちは、兵士を讃えながら、どこまで彼らを理解しているといえるでしょうか。

戦争はウソで始まり、ウソで終わる。
僕らはジャングルへ、そこに意味はなかった。
息子は辺ぴな砂漠へ。なぜだ?理由なんかない。
そして、棺はウソで固められて。
どん底にまで落ちないと目が覚めない。
この悲劇はわかっていた。
ついに3人の口からいくつもの実感が語られます。

少し、イラク戦争とイラク帰還兵のことを書かせてください。

今年はイラク戦争開戦から15年。
開戦以来、イラクは"テロ”の最大被害国のひとつとなり、
内戦状態にも陥り、地獄を何度も経験しました。
ここ数年は、イラク戦争が生んだモンスター"ISIS"に苦しみました。

イラク戦争は「永遠の対テロ戦争」の始まり。
テロ撲滅どころか、世界中にテロが拡散してしまった。
つくづく...
戦争は理想論。ちっとも現実的じゃない。
戦争は費用対効果が低すぎる。安全は遠のくばかり。

2003年
「イラクは大量破壊兵器をもっている」
かつての米大統領や英首相は脅威を煽り、
勇ましいリーダーたちは「世界の安全のために」
イラクへの先制攻撃を強行しました。

攻撃開始からわずか数週間で、
「大規模戦闘終結宣言」を発したブッシュ大統領でしたが、
サクッと終わる戦争なんてない。
しかも、敵が誰かわからない。
そのうち「動くものはすべて撃て」が繰り返され、
夥しい数の民間人がさらに犠牲になっていく。

いつか聞いた声。
いつか来た道。
ジャングルは砂漠に続いていたというわけか。

2003年11月、日本の外交官2名がイラクティクリートで殺害。
12月、フセイン大統領処刑。
私はバグダッドでそれらの報道を見ていました。

米軍の占領政策は「失敗」と叩かれ、
狙撃や爆弾攻撃が増えていきました。
路上には巻き添えになった人々の血や遺体。
苛立つ米兵たちは私たちにも銃を向けることが多くなっていました。

学用品を届ける米兵たちと学校で行き合った時、
生徒も先生も一斉に校内に隠れました。
両手を上げないと撃ってくるかもしれない米兵たちを、
好きになれとは無理な相談です。

何万人ものイラクの民間人が殺されたのち、
勇ましいリーダーたちは、
大量破壊兵器保有疑惑は「誤情報」だったから謝ると言いだしました。
いやいや、遅いよ。遅すぎる。
すでにイラクは泥沼です。

戦場イラクで路上爆弾や狙撃で殺された米兵の死者数が止まらない。
「兵士を帰還させよ」というスローガンが全米でうなっていました。

いつか聞いた声。
いつか来た道。
ジャングルと砂漠が一緒になっていました。

「大義なき戦争」でイラクに送られ、
過酷過ぎる戦場を生き延びた若い兵士たち。
2005年、私は彼らに会うためにアメリカに行きました。
故郷に帰ってきた彼らは戸惑っていました。
「英雄」と呼ばれながら、自分のしてきたことに「痛み」を感じて。

1971年、ベトナム帰還兵が自らの残虐行為を告白し「冬の兵士」となりました。
2008年、今度はイラク帰還兵たちが「冬の兵士」となりました。

私がそれまでイラクの人々から聞き取ってきたおぞましい米軍蛮行の被害は、
加害者である米兵が語ったことで、初めて世間に大きく知られることとなりました。

米兵の「告白」は軍法裁判にかけられたり、刑務所送りになる可能性が高いのです。
彼らの勇気と良心は賞賛に値します。
けれど、「心の痛み」はそばにいてヒリヒリするほどでした。

兵士としての行為が、一人の人間としての良心と折り合いがつかないよ。
僕が殺したあの子は誰だったんだろう?
「動くものはすべて撃て」と上官の命令。
そんなこと「あってはならない」のに、
イラクとベトナムでは「日常茶飯事」だった。

笑っていたって心は痛い。

「殺すか殺されるかは当たり前」と米兵はよく言いますが、
「殺したくない」は軍隊では罪。

戦場で人間性を取り戻すことだけはやっちゃいけないんだ。
「名誉」だとされながら、いっそ殺されたいと願う日々。

「ウソ」を受け入れねば生きていけない者、
隠し通さねば生きていけない者。
楽になりたくて戦場に戻ろうとする者。

アメリカでは帰還兵が1日平均22人自殺するという。(退役軍人省)
「本当ですか?」と訝る私に、「現実はもっと多い」と即答する米専門家。

映画の中のベトナム帰還兵3人も若いイラク帰還兵も、
命令があれば死ぬことさえ厭わない覚悟をもっている。
「国に命を捧げた兵士はみな英雄」。
なのに、彼らはみな胸の中に痛みを抱えている。

せめて、その戦争を始める理由が「ウソ」でなければ。
せめて、ジャングルでの戦いに「意味」があれば。
せめて、失われた兵士の棺が「真実」で包まれていれば。

〜Not Dark Yet (まだ暗くない)でも やがて闇となる〜
私たちが「ウソ」と「隠蔽」に慣れた頃、
私たちの「英雄」はさらなる「ウソ」と「隠蔽」で固められていることだろう。
それが「国に命を捧げる兵士」に対する敬意といえるの?
長らく戦場から遠ざかっていた私たち日本人は今、そこに向かって歩いている。
「国に命を捧げる兵士」を戦地に送り出す覚悟が私たちにあるといえるの?
もう一度、闇に葬られ、闇に突き落とされないと目が覚めないのか。
あたりはもう暗くなってきた。

敬称略

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